【理学療法士の転職】療法士の「新しい居場所」が保育園になる時代がやってきた——2026年4月、制度が変わりました。この変化に気づいていますか?

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療法士の転職先を考えるとき、多くの人は「病院・老健・訪問」の三択の中で悩まれるのではないでしょうか。

どこを選んでも、本質的な問題——構造的な収入の天井、組織への依存、専門性がなかなか評価されない雇用体系——からは、なかなか抜け出せないと感じている方も多いと思います。

そんな状況の中、2026年4月、その前提を少し揺るがすかもしれない制度改正が、静かに施行されました。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、保育士免許なしで「みなし保育士」として保育園に配置できるようになったのです。

これは単なる就職先の追加ではありません。
療法士という職能が、社会のどこに必要とされているかの再定義の始まりとも言えるかもしれません。


制度の中身——何が変わったのか

保育士免許なしで保育園に療法士の配置ができるようになった

こども家庭庁は2026年4月8日付の通知で、保育所の職員配置基準を改正しました。

保育所において、当該保育所に勤務する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(中略)のいずれかに該当し、かつ、子育てに関する知識及び経験を有する者を、1人に限り、保育士とみなすことができる。

引用:こども家庭庁「保育所等における特定理学療法士等の配置に関する特例について

これまで看護師・保健師・准看護師には「みなし保育士」として保育園に配置できる特例が認められていましたが、今回の改正でPT・OT・STもその対象に加えられました。狙いは、運動や認知に課題のある子どもへの専門的対応を充実させるとともに、発達障害への対応に悩む保育士の負担を軽減することにあるようです。

療法士の小児分野での関与はすでに始まっており、児童発達支援事業所や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援といった形で現場への関与が広がっていました。今回の制度改正は、その流れをさらに一歩進め、保育所の「中」に療法士が存在することを正式に制度化したものと言えます。

ポイントを整理すると、以下のようになります。

  • 対象職種:PT・OT・ST(国家資格保持者)
  • 条件:保育士資格は不要
  • 位置づけ:配置基準上の「みなし保育士」としてカウント可能
  • 配置要件:子育てに関する知識・経験が必要。常勤保育士とのペア体制が前提
  • 人数制限:1施設につき1人まで
  • 背景:インクルーシブ保育の推進・障害のある子どもの保育所受け入れ強化


なぜこれが「療法士の働き方」の話になるのか

ここで少し立ち止まって考えてみましょう。

この制度改正の意味は、「保育園という新しい就職先が増えた」という話にとどまりません。

本質は、「療法士の専門性が、医療保険・介護保険の枠外でも正式に評価され始めた」という事実のほうにあると思います。

病院や老健でのリハビリは、診療報酬という国の点数制度の中でしか評価されません。
どれだけ質の高いアプローチをしても、収入は制度の天井に縛られてしまいます。

保育の世界は少し違います。

保育所は自治体・法人によって運営形態が多様であり、専門職の処遇も一律ではありません。
民間の認可外保育所や企業主導型保育、インクルーシブ保育に特化した施設など、雇用条件を交渉できる余地が生まれやすい構造があります。

さらに、フリーランスや業務委託という関わり方の可能性も考えられます(後述)。
療法士が保育所に「定期的に専門的なアドバイスをしに来る外部の専門家」として関わる形は、すでに訪問型支援の保育所等訪問支援で起きていることです。
これが保育所にも広がっていけば、雇用に依存しない働き方への入り口のひとつになり得るかもしれません。

現場が抱える「本当の課題」——制度だけでは動かない部分もある

ただし、楽観的になりすぎるのも禁物です。

こうした専門職は必ずしも保育経験があるわけではなく、配置を進めた場合、限られた人員でどう保育を分担するかが課題になります。

保育の現場は、リハビリ室のような「個別訓練の空間」とは大きく異なります。集団の中で、遊びを通じて子どもに関わるという、全く異なる専門性が求められる場でもあります。

療法士として保育の場に入るためには、たとえば以下のような準備が必要になるかもしれません。

  1. 小児発達の知識(発達段階・発達障害の基礎的な理解)
  2. 集団保育の文脈でのアプローチ力
  3. 保育士との協働スキル(言語・コミュニケーション文化の違いを越える力)

逆に言えば、これらを意識して準備できた療法士が、この新しい領域で独自のポジションを持てる可能性があるとも言えます。

「ラジオ体操でケガをする」——保育現場が直面している現実

突然ですが、こんな話を聞いたことはありますか。

都内のある保育園で、今年からラジオ体操が禁止になったそうです。
理由は、子どもたちの運動能力が低下しすぎて、ラジオ体操をすることでケガをする子どもが出るようになったから。ジャンプで足をくじく、上半身を回したら倒れ込む——準備体操のはずのラジオ体操が、もはや「危険な運動」になってしまっているというのです。

(出典:石井光太「体育座りできない、骨折率は以前の2.4倍…子どもの運動能力が劇的低下」FRIDAYデジタル、2024年9月)


これは極端な話ではありません。1970年代と比較すると、今の小中高生の学校における骨折率は2.4倍にまで上昇しています。しかも、以前の骨折事故は休み時間のふざけ合いがメインだったのが、今は教室を出ようとして友達とぶつかって骨が折れる、荷物を持って歩いていてふらついて転んで骨折する、といったケースが増えているといいます。

出典:ニッセイ基礎研究所「子どもの骨折増加に2つの側面」2019-11-05

背景にあるのは、運動能力の「二極化」です。習い事でスポーツをしている子は伸びている一方、私生活で運動する機会がまったくない子は運動能力がほぼ育たないという状況が生まれています。そしてこうした問題は、小学校に入る前、保育園や幼稚園の段階ですでに深刻化しています。

ここで立ち止まって考えてみてください。

保育士は、子どもの運動発達の専門家ではありません。

転んだときの受け身の取り方、年齢と筋力に応じた動きの設計、感覚統合の視点からの遊び環境づくり——これらはまさに、理学療法士・作業療法士が本来持っている専門性そのものです。

子どもの身体が弱くなっているこの時代に、運動発達のスペシャリストが保育現場にいない。


そこに、2026年4月の制度改正の必然性があると言えるのかもしれません。

診断がついていない”グレーゾーン”の子どもたちの存在

さらに、もう一つ見落とせない視点があります。

それが発達障害のある子どもたちが見過ごされている問題です。

普通学級に通う子どもの約10人に1人に、学習面や行動面で著しい困難を示す発達障害の可能性があるとの報告があります。そして自閉症・情緒障害特別支援学級の在籍数は、2007年以降毎年約6,000人ずつ増加し続けています。

引用元:独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター「統計情報

問題は、診断がついていない”グレーゾーン”の子どもたちの存在です。
確定診断がないがゆえに病院でのリハビリも訪問看護も受けられない。それでも保護者の中には「自費でもいいので療法士に診てほしい」と願う方が少なくありません。それほど、地域で子どもの発達を支える手が不足しているということです。

保育所は、そうした子どもたちが毎日通う場所です。
医療機関でも福祉施設でもなく、日常の集団生活の場に療法士がいる——それは、診断の有無にかかわらず、困り感を抱える子どもに最も早く・自然に関われるということを意味します
保育士では気づきにくい発達上のサインを専門的な視点でキャッチし、保護者や保育士へのアドバイスにつなげていく。そんな役割が、保育所という場で初めて生まれてきます。

つるかめさん
つるかめさん

発達障害の子どもの話は以前の記事内でもお話ししたね。

つるかめさんは保育士の資格も持っているけど、運動の発達の仕方とか発達障害詳細とかは勉強の範囲が薄かったと思っているよ。テキストや勉強した内容によって濃淡はあると思うけど、メインの学習内容ではないってことだね。

保育士とは、保育士は乳児から小学校入学前の保育を必要とする子どもを預かり、保護者に代わり子育てを実践することが仕事の中心です。
引用:全国保育士会HP 「保育士の仕事って?

”子育て”の範疇をどこまで解釈するかにもよるけど、保育士さんは運動も発達障害も専門的に勉強しているわけではないから、現場対応に悩むことが多いという声はつるかめさんの周りの保育士さんも聞かれているよ。
園で勉強会を組んだり個人的に勉強している保育士さんもたくさんいると思うけど、本筋の”保育”の業務内容を考えると、専門家の投入による分業化は業務効率や子ども中心の発育・保育の視点からも良い傾向だと思うな。


療法士の「活躍の場」は、こんなふうに広がっています

今回の保育所みなし配置を加えると、療法士が活躍できるフィールドはこのように整理できます。

領域主な場所報酬原資雇用の柔軟性
急性期・回復期病院診療報酬低め
生活期老健・デイ介護報酬低め
訪問訪問看護ST医療・介護報酬中程度
小児福祉児童発達支援・放デイ障害福祉報酬中程度
保育(今回の改正)保育所・認定こども園自治体補助+法人裁量可能性あり
スポーツ・予防民間・自費自費高め

報酬の原資が変われば、雇用の論理も少しずつ変わってきます。
自費や法人裁量の領域になるほど、療法士の「交渉力」と「ブランド」が処遇により直結しやすくなっていきます。

この制度改正を「チャンス」として活かすために

最後に、これを転職・独立の文脈でどう活用するかについて整理してみます。

① 先行者としての余地がある 制度が施行されたばかりで、保育園に積極的にアプローチしている療法士はまだ多くありません。認知が広まる前に動いた方が、「保育×リハビリ専門職」という希少なポジションを築きやすい状況があります。

② 副業・業務委託としての入り口としても機能する 常勤採用だけが選択肢ではありません。「月に数回、発達の視点でアドバイスしてほしい」というニーズは、保育所側にも少しずつ生まれてきています。本業と並行して関係を築いていく、フリーランス型の関わり方のきっかけにもなり得ます。

③ 発信の種になる 「保育現場を知っている療法士」「インクルーシブ保育に対応できる専門職」という視点は、今後ニーズが高まる領域です。note・ブログ・SNSで発信することで、同業者への情報提供と、保育法人へのコンサルティング案件、両方の種になる可能性があります。


医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)の制定

実は、保育所における専門職ニーズの高まりは、今回が初めてではありません。

2021年6月、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(医療的ケア児支援法)が成立し、同年9月に施行されました。この法律により、地方公共団体は医療的ケア児の支援に係る施策を実施する責務を、また保育所等は在園する医療的ケア児に対し適切な支援を行う責務を、それぞれ明確に負うこととなりました。出典:厚生労働省「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」について

~「包括的保育」推進で受け入れ急増~
共働き世帯の増加や、障害の有無で区別しない「インクルーシブ(包括的)保育」の推進などに伴い、保育現場で障害などを抱える子どもたちの受け入れが広がっている。

 こども家庭庁によると、保育所や認定こども園などに通う身体・知的障害児や発達障害児は2014年度に5万6096人だったのが、24年度に11万2040人に倍増。また、日常的な医療行為が必要な「医療的ケア児」も16年度の323人から、24年度には1535人と5倍近くに増えた。

引用:読売新聞「障害ある子の保育に専門職の「みなし保育士」、作業療法士・言語聴覚士ら配置可能に…「細やかな対応」期待


これを受けて、保育所の設置者には、医療的ケア児が適切な支援を受けられるよう、看護師等または喀痰吸引が可能な保育士の配置が求められるようになりました。つまり、保育所に看護師が必要な時代がすでに始まっていたのです。

しかし現実は、医療的ケア児の受け入れにあたっての課題として「医療的ケアを実施できる看護師を確保できない」と答えた市区町村が約7割にのぼるという状況で、専門職の確保は今も課題として残っています。

医療的ケア児の保育施設が足りない 支援法が施行されても…背景には看護師不足
人工呼吸器や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な「医療的ケア児」。受け入れる保育所や幼稚園は増えているが


そこに今回、PT・OT・STのみなし保育士配置が加わりました。
医療的ケアを直接行う看護師とは役割が異なりますが、運動発達・感覚統合・コミュニケーション支援といった療法士の専門性は、医療的ケア児や障害のある子どもたちの保育を支える上で、看護師とは別の軸で必要とされるものです。

看護師が「医療の安全」を担い、療法士が「発達と生活の質」を担う——2021年の医療的ケア児支援法から始まった「保育所の専門職化」の流れに、2026年の制度改正は確かな追い風となっています。



給与の基準は「療法士相場」ではなく「保育士相場」?

療法士が保育園に常勤で採用される場合、給与の基準は「療法士相場」ではなく「保育士相場」が適用されることが多いという現実があります。

保育所の給与は、こども家庭庁の処遇改善等加算という制度に基づいて設定されており、雇用する職種ではなく施設単位で補助額が決まる構造です。つまり療法士であっても、その施設の保育士給与テーブルに準じた処遇になる可能性が高いのです。


各職場の年収比較(常勤・正職員)

勤務先平均年収(目安)出典・備考
病院(急性期・回復期)420〜460万円診療報酬ベース、大規模ほど高め
訪問看護ST(療法士)450〜500万円職場別では訪問看護STが最も高く、一般病院との差は年収で約66万円
介護施設(老健・デイ)380〜420万円介護報酬ベース
保育所(今回の制度改正)350〜420万円給与テーブル要確認
児童発達支援・放課後等デイ380〜430万円障害福祉報酬ベース

療法士全体の平均年収は、令和6年賃金構造基本統計調査によると約444万円(PT・OT・ST・視能訓練士の合算)です。一方、保育士の平均年収は令和6年賃金構造基本統計調査によると約407万円で、2026年度はさらに5.3%の追加引き上げが予定されており、平均でさらに約20万円のアップが見込まれています。


ケース別シミュレーション(常勤・30代前半想定)

【ケースA】私立認可保育所・一般採用(保育士給与テーブル適用)

項目金額
月給(基本給+諸手当)約27〜30万円
賞与約60〜80万円(2ヶ月分程度)
年収(税込み)約390〜440万円
手取り月収目安約22〜24万円

療法士の資格手当が上乗せされるかは施設次第。交渉次第で月1〜3万円加算されるケースもあります。

つるかめさん
つるかめさん

保育園は”手当”が充実しているところが多くあります。住宅手当や専門職手当(役職)など医療機関や訪問看護ステーションよりも手厚い運営母体もあります。
知人の保育士さんが勤めている保育園では、住宅手当が8万円/月支給されているとのことでした。これは年間100万円近い非課税所得があることと同義です。
それは魅力的ですね★


【ケースB】インクルーシブ保育・発達支援特化型の保育所

発達障害や医療的ケア児の受け入れに力を入れている施設では、療法士の専門性を評価して加算採用するケースがあります。

項目金額
月給(専門職手当含む)約30〜35万円
賞与約70〜90万円
年収(税込み)約430〜510万円

この水準が実現するかは、施設の財務体力と採用交渉力に大きく依存します。


【ケースC】公立保育所(公務員採用)

自治体によっては、療法士を福祉職の地方公務員として採用するケースがあります。この場合は給与表に基づき安定して昇給します。

項目金額(30代前半目安)
月給約28〜33万円
賞与約80〜100万円(民間より手厚い傾向)
年収(税込み)約420〜500万円
特徴退職金・福利厚生が充実。昇給は緩やかだが安定

正直なまとめ:数字より「何を得るか」で考える

病院(急性期)訪問看護ST保育所
年収水準△〜○
収入の安定性△(歩合制あり)
専門性の希少価値△(飽和気味)◎(先行者利益)
将来の市場成長性
雇用の柔軟性○〜◎
ブランド・発信の種

保育所への転職は、短期的な年収アップを狙う場所ではありません。

ただし、「制度が始まったばかりで療法士がほとんどいない領域」に先行して入ることで得られる希少ポジションと発信の種は、中長期的なブランド構築・フリーランス案件獲得の布石として十分に価値があります。





おわりに——制度は変わりました。あとは「知って、動く」だけ

療法士の仕事は、病院の中だけにあるわけではありません。

社会が「子どもの育ちを専門職で支えたい」と制度化した瞬間、それは療法士が雇用の構造を少しずつ選べるようになる時代への扉が開いてきたということでもあります。

制度の変化を「知っている」だけでは、なかなか何かが変わるわけではありません。

今回の法改正は、あくまで常勤雇用としての配置を前提としたものです。
「みなし保育士」として保育所に入るには、勤続要件や研修修了、常勤保育士とのペア保育体制など、いくつかの条件をクリアする必要があります。

しかし、ここで少し視野を広げて考えてみると、別の可能性も見えてきます。

療法士が保育所に常勤で配置される事例が増えれば、
「療法士がいると、障害のある子どもへの対応や保育の質が上がる」という認識が保育現場に広まっていきます。

そうなったとき、すべての保育所が常勤採用できるわけではありません
小規模な保育所や人件費に余裕のない施設では、「常勤は難しいけれど、月に何度か来てもらってアドバイスだけほしい」 というニーズが生まれてくることも十分考えられます。

これはすでに、保育所等訪問支援や児童発達支援センターのコンサルテーションという形で、
療法士が外部の専門家として保育現場に関わる動きの中で起きていることです。

つまり、法改正によって保育分野への療法士の参入が進む→療法士の専門性への認知が高まる→常勤雇用の枠を超えた、業務委託・自費契約での関与へとつながる可能性がある、という流れです。

これは現時点では「可能性」の話に過ぎませんが、訪問看護や自費リハビリ分野で先行して起きてきた流れと、構造としてはよく似ています。制度が市場をつくり、市場がフリーランスの需要をつくる。 療法士が「雇われる側」だけでなく「選ばれる専門家」として動ける領域が、少しずつ広がっているのかもしれません。

「療法士はオワコン」と言われる時代に、保育所という新しい市場が制度として開いた。これをどう読むかで、5年後のポジションはかなり変わってくると思います。

最終的には資格をどのように活かして自分の進みたい道に進んでいくかという選択になると思います。既存の保険制度に縛られた働き方から異なった視点で働き、給与を得る。そして、スキルを身に着けることで自身の価値を高めるための契機が、今回の法改正なのかもしれません。

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